江戸東京の風景学 2018(公園緑地編)

早稲田大学エクステンションセンター 八丁堀校 早稲田大学オープンカレッジ講座
江戸東京の風景学

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2018年度 秋期  火曜日4限(15:00〜16:30)

【目標】 江戸以来、東京の風景は大きく変貌しながら今日に至っています。変貌の契機となる主な局面について理解するとともに、風景が形成されてゆくプロセスを、多様な資料から考えます。これらに加えて実際のまちの現況を見て歩くことで、風景に対する見識を深めます。
【講義内容】 写真・絵画・地図・映像などの資料を用い、江戸・東京が持つ多様性を浮き彫りにしてゆきます。土木的スケールのものから路地空間まで、これまで取り上げられることの少なかった側面に着目し、まち歩き(まちなか巡見)により、実際の風景から都市とそれを見つめる人々の意識、そしてその両者を大きく規定する時代背景について理解し、江戸東京の風景を考える手がかりとします。
【講師】 千葉一輝:麻布大学 講師
赤坂 信:千葉大学大学院園芸学研究科・園芸学部 教授
松本泰生:尚美学園大学 講師
回 月日 各回タイトル・担当 各回概要
第1回
10/02
明治期における公園の導入
 千葉一輝
東京と名前こそ変わったものの、実質は城下町のままだった江戸は、早急に西欧風の都市に改造する必要に迫られ、明治政府は様々な政策を打ち出します。そのひとつが公園です。江戸の遊覧所(名勝地や社寺境内)が似ているとして指定されますが、事は容易ではありませんでした。我が国における公園の契機となった太政官布告や、最初の都市計画である市区改正等を通して草創期の公園の導入過程を見てゆきます。
第2回
10/09
公園史を比較する −ヨーロッパのパークと日本の公園−
 赤坂 信
ヨーロッパの「パーク」の名の起源から近代になって都市計画の中に「公園」が制度化されるまでの歴史をたどります。初の本格的な洋風公園といわれた東京の日比谷公園はどのようにして生まれたのか、そして関東大震災の復興事業で東京市内各所に設けられた公園によって東京の公園が根づいていったのかを解説し、公園の存在理由をもう一度ふりかえる機会になればと願っています。
第3回
10/16
近代における都市緑地の誕生 −明治神宮の内苑と外苑−
 赤坂 信
明治神宮は明治天皇と昭憲皇太后を祭神として、まったく新しくつくられたもので、双方とも大正年間を通じて造成されました。内苑は天皇皇后を祀るもので、国費でかつ和風で造成。外苑はその偉業をたたえる記念センターのようなもので、こちらは基本的に献金で造成され、かつ洋風を基調として造成されたと伝えられています。当時、最大面積の緑地計画となった明治神宮の内苑、外苑の設計コンセプト、植栽計画の考え方、そしてその社会的影響について解説します。
第4回
10/23
巡見 明治神宮内苑〜外苑
 赤坂 信
前回の講義で紹介した大正期に生まれた都市緑地、明治神宮の内苑、外苑を実際に訪れ、設計コンセプトや人工的に植えられた森林として出発した森林の 成長ぶりを見ながら、現代における東京都内の大面積の緑地の存在意義をあらためて考えてみましょう。
第5回
10/30
東京の水系と公園
 松本泰生
東京都内には、荒川と隅田川を中心とした荒川水系の川、下町東部の江戸川や中川が属する利根川水系の川、関東山地から流れる多摩川を中心とした多摩川水系の川、このほか目黒川、渋谷川など直接東京湾に注ぐ多くの中小河川が流れており、それぞれの流域には大小さまざまな公園があり、人々の憩いの場所になっています。海岸部の埋立地などに展開する海浜公園や旧江戸城の濠を利用した公園なども含め、水辺の公園の現状と変遷を見て行きます。
第6回
11/06
神田上水の水源地、井の頭公園
 松本泰生
武蔵野台地には多くの伏流水があり、それが湧水として湧き、台地上を流れる中小の河川になっています。なかでも井の頭池は神田川の水源として著名で、江戸期には神田上水として江戸市民の暮らしを支えるなくてはならない存在でした。近代以降は井の頭公園として都民に親しまれている井の頭池の江戸・東京における都市的位置づけを見て行きます。
第7回
11/13
巡見 井の頭公園とその界隈
 松本泰生
第6回の講義を踏まえて、神田上水(神田川)の水源である井の頭池のある井の頭公園と、その北側に広がる吉祥寺界隈の街を歩きます。江戸期から郊外の名所であり、東京西郊の著名な公園の一つになっている公園の緑地と水辺をたどり、またそこに隣接して発達した繁華街と住宅地を体験します。
第8回
11/20
草創期の公園その後
 千葉一輝
洋風の公園が東京に広まってゆく中で、上野公園、浅草公園、芝公園、飛鳥山公園等々、最も初期に指定された江戸由来の公園は、その後どうなったのでしょうか。 維新後、早々に政府によって出された社寺上知令や、戦後直ぐの社寺境内地公園の解除などを考慮しつつ、本講義では消滅してしまった浅草公園や、外周だけ残った芝公園などを中心に、公園化された境内地について考えます。
第9回
11/27
忍ヶ岡での顛末と現在
 千葉一輝
パンダや世界遺産、美術展や音楽会で話題になる上野公園は、かつては忍ヶ岡と呼ばれていました。東叡山(東の比叡山)として寛永寺が建立され、琵琶湖に見立てられた不忍池とともに、江戸有数の景勝地でした。維新の際、無血開城で江戸自体は戦火を免れましたが、その代わりのように上野で幕府の残党と官軍の戦が行われ、官軍勝利と全山の焼失、その後幾度となく博覧会が開催されました。静謐で長閑だった上野のお山の風景の変遷を辿ります。
第10回
12/04
巡見 上野公園以前
 千葉一輝
前回の講義を踏まえて、上野公園を歩きます。僅かでも明治以前の上野の原風景を思い起こさせるようなルート設定を試みます。前回、前々回の公園化された境内地という視点で風景を眺めると、時の経過が色濃く受け止められることと思います。

・上記は予定です。都合により日程や講義内容を変更する場合があります。
・まちなか巡見は現地集合・現地解散で、4km程度歩きます。集合場所等は事前の授業でお知らせします。 八丁堀校との間の移動には時間が掛かりますので、登録の際は、前後に時間の余裕をおとり下さい。


【講師プロフィール】

千葉一輝:
1950年東京生まれ。慶應義塾大学法学部卒。早稲田大学大学院理工学研究科修了。工学博士。専攻は都市景観、都市デザイン。ものつくり大学講師。台東区・新宿区や調布市等の景観アドバイザー。論文に「近代以降における東京の寺院集積地区に関する研究」「江戸・東京における眺望の変容に関する研究」など。
千葉一輝氏のWebsite「富士見坂眺望研究会

赤坂 信:
千葉大学大学院を経て西ドイツ(当時)政府給費留学生としてハノーバー大学に留学。1981年より千葉大学助手として園芸学部に勤務し、現在に至る。専門は風景計画学、造 園学、都市緑地史。『ドイツ国土美化の研究』で京都大学から農学博士の学位を受ける。ICOMOS国際会議で眺望の再生と復活をめざすVista Heritage(眺望遺産)の提言。日本イコモス会員。

松本泰生:
1966年静岡県生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科修了。博士(工学・早稲田大学)。都市景観・都市形成史研究を行う傍ら、90年代から東京の階段を訪ね歩く。著書として『東京の階段−都市の「異空間」階段の楽しみ方』(日本文芸社)、『新宿学」(紀伊國屋書店・共著)などがある。


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