2000年の元日は、袋井から磐田へ歩くことになった。
駿河銀行袋井支店(旧袋井運送会社)
建設年:1918(大正7)
構造 :煉瓦(竹筋)
階数 :2F
備考 :写真の建物はレプリカ。もとの建物は1988(昭和63)頃に解体。
1951(昭和26)に駿河銀行の支店となる。
現在の建物は、元の場所から少し離れたところに外観復元されたもので、構造は恐らくRC。
また左側は当初は無かった部分で、現在地で建物が造られた際に新設されたもの。
袋井駅前には駿河銀行袋井支店の建物がある。昔、近くにあった建物のレプリカなんだそうだが、レトロな外観を楽しむことができる。昔の建物の外壁煉瓦は東京駅に使った煉瓦の余り材料と伝えられているが、この建物の煉瓦はそれの再利用だろうか。真新しい感じだったから、違うのかもしれない。
レプリカであり当初とは場所も異なるので、もはや別の建物ではあるのだが、それでも袋井駅前を印象的なものにしている建物ではある。
(2005.11.21、2009.4.1修正追記)
袋井市街を西の方へ抜けかけると、木造の白い洋館が建っていた。
旧澤野医院
所在地:袋井市川井444-1
建設年:1934(昭和9)
構造・階数:木造2F
2005年(平成17)以降は袋井市澤野医院記念館として一般公開されている。
写真は旧東海道沿いの病棟部分。背後には和館の居宅(1855(安政2)築)、洋館(1916(大正5)築)、渡り廊下、庭園などもあるそうだが、この時点ではまだ公開されていなかった。
市街を抜け、更に西へ向かうと、街道は広々とした田圃の中を行く一本道になる。ところどころに松並木が残る。冬の強い北風の影響だろうか、松の幹がみな南側に傾いているのが印象的だ。
袋井と磐田の境には少し丘陵地がある。丘を上って最も高いところに達すると、磐田から天竜川、浜松方面の遠州平野の視界が開ける。その広がりの中に、浜松駅前にそびえ立つアクトタワービルの姿が、ぼんやりと浮かび上がっている。浜松が近づいてきたのだなと感じる瞬間だ。
2005.11.21 駿河銀行袋井支店について追記。
2000年に歩いた時には、正面の外観が丁寧に復元されていたため、てっきり改修保存されて使い続けられているのかと思いこんでいたのですが、袋井市在住の方から、移築や改修保存ではなく、外観を似せた全くの新築である旨を指摘したメールを頂戴しました。改修保存しながら大切に使われている旨の記述は誤りだったので、削除しました。
元々の建物は竹筋煉瓦造り2Fの建物だったが、駅前整備の一環で1988年頃に解体されてしまったとのこと。保存運動もあったが、市からの十分な補助が得られず、移築保存もできなかったそうです。そういえば、やけに外観が整然として綺麗だった・・・。現在は竹筋煉瓦造りはまず造られないし、銀行建物でもあるので、構造も往時とは異なるはず。
この情報を下さった方からは、元々の建物と新築のレプリカ建物が一枚に収まっている写真もお送り頂いた。元の建物を解体する前に、別の場所に外観がそっくりなレプリカを造ったらしい。レプリカを造るのに、なぜ元の建物の材料を使わなかったのか不思議。竹筋補強の煉瓦造という構造面と、元の材料を再利用することが却ってコスト増になるということだったのだろうか。
本物を捨て去って、レプリカで良しとする姿勢はやや安直な気がする。ただ、どうしても元の建物を保存できない場合は、次善の策として、復元での外観の継承も良しとすべきなのかもしれない。記憶のよすがとなる形態自体が完全に失われてしまうよりはまだましというあたりだろうか。
ともあれ、袋井駅前の景色の記憶を訪れる人々に印象づけてくれる建物であるには違いない。