Site Y.M. 建築・都市徘徊

「崖」から見た山の手地域の斜面地


用途及び形態に見る崖の諸相

(1)崖が見られる空間

【建築物及び建物敷地】
 山の手地域全域に渡って分布し、建築・宅地の規模に応じて規模が大きく異なるとともに、その集積の状況は非常に多様である。僅かな高低差でも発生し、建物敷地(宅地)を区切るとともに、建て替え、再開発等により容易に消失もしくは形態の変化が起こる。

【鉄道路線沿い】
 東京都心部を縦横に走る鉄道路線沿いには多くの崖が分布している。急勾配の斜面を登ることが出来ない鉄道が、山の手地域の起伏の激しい地形に対応するため盛土・切通しが造られ、そこに崖が発生したのである。またJR山手線の田端駅から上野駅にかけての線路沿いに見られる崖のように台地端に沿って鉄道が敷設されたために生じた崖もある。

【道路の盛土・切通し部分】
 鉄道路線に付随する崖と成因は似ており、道路の盛土・切通し部分に表れる崖である。土木技術がそれほど発達していなかった江戸時代以前の街道は、自然地形に応じて通っていたが、明治以降、近代都市計画理念に基づいて建設・改修された道路には、路面電車軌道の敷設のためもあって盛土・切通しが多く用いられている。

【オープンスペース・緑地内】
 主に自然地形を巧みに活かした公園等に存在するもので、都市的な土地利用のなされていない場所に見られる崖である。東京都心部に特有のものとして、皇居の内堀、外堀沿いに見られる崖(石垣)が挙げられる。

(2)崖の形態

【崖の規模】
 崖の規模に関わる要素は、「高さ−垂直方向への広がり」と「長さ−水平方向への広がり」に大別され、崖の立地条件と深く関わる。高さは、僅かな高低差のある場所に位置する50cm以下のものから、10m以上で斜面地を大きく区分するようなものまである。長さも同様に千差万別で、戸建て住宅の隣地境界部に見られる小規模な崖から、台地端に沿って湾曲する長さ2〜3kmのものまである。

【崖の表面の仕様】
 崖の表面の仕様(テクスチュア)には大別して3つある。1つ目はコンクリートなど人工素材による崖である。一般に表面が平滑に形作られたものが多いが、中には景観的配慮から自然石に模して表面加工が施されているものもある。2つ目は天然素材を使用した崖である。その多くは加工が容易な大谷石を積み上げたものである。3つ目は土堤である。これは比較的緩やかな斜面に限定され、大規模なものが多い。

Written By Tamaki Matsuo

07.8.11


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