旧東海道を歩く 日坂 牧ノ原大茶園

1997.5.2

 写真の中に立つ柱の上には扇風機のようなものが付いている。春先の無風の朝方に遅霜がおりると新芽が痛んでしまう。この着霜を避けるために風を送り、空気の流れを造るのだという。昼間は風を受けてゆっくり回っているだけだが、朝方になると茶畑の暗闇の中でファンがブーンとうなりを上げて回っているのである。

 機械で刈り取られたお茶。欧米人には不思議な美しさを持った景色として受け取られるようである。確かにちょっとしたArtのような美しさがある。畝を両側から挟むように立って、アーチ形になった刈り込み機を使って刈るとこんなコトになる。でもそういう機械を使うのは番茶の頃。新茶の頃は手摘みで、その後次第に機械ばさみを使う模様。

 牧之原の高台には、この地域が最も見晴らしの良い場所であるため、テレビ、ラジオの中継・送信塔がいくつか建っている。またこの他、少し北の方の粟ヶ岳も景色の良い所でここにもNTTかなにかの中継塔が建っている(ちなみに粟ヶ岳は桜の名所でもある)。

 私は何故かこの塔が林立する景色に心惹かれるときがある。赤白に塗り分けられた大小の塔が並ぶ景色は何故か興味深い。接近していくと、相互の位置関係のため、それらが成すスカイラインは複雑に変化する。大きくなったり小さくなったり、陰に隠れてしまったり右に見えたり左に見えたり・・・。ストリートのシークエンス変化にはないダイナミックな景観変化である。

 山上に立つ塔の場合、アプローチする道の高低もあって、上下にも視線や視野、そして視対象は移動する。まるで星座の間を動く惑星のように位置が変わると言えなくもない。これが面白くてたまらん。誰かこういうシークエンス景の研究してくれる人いないかしら?。それともこういう研究は既にあるのでしょうか?。金比羅宮の景観変化は、これの建築的な利用例らしいけど、他にも沢山の実例や偶然の例はありそうな気がする。新宿の副都心ってそういう意味じゃ駅前から行くとあまり面白くない。街区割がグリッドで都市構成的には合理的だけど、姫路城やイタリアの山岳都市のような接近体験や景観変化は得られない。そう、対象への接近体験の解析とかも面白そう。建築分野では美術館などで実践されてることだけど。

2007.8.12
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