江戸東京の風景学 2018(水辺編)

早稲田大学エクステンションセンター 八丁堀校 早稲田大学オープンカレッジ講座

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2018年度 春期  火曜日4限(15:00〜16:30)

【目標】 ・江戸東京という視点(江戸との連続性から捉えた東京の特質・アイデンティティー)の理解
・江戸から東京における、風景の変化(新たな誕生や、消滅、保全継承など)の把握
・変化の主要な契機やプロセスについて分析し、今後の東京の風景がどのようにあるべきか展望する
【講義内容】 写真・絵画・地図・映像などの資料を用い、江戸東京が持つ多様性を浮き彫りにしていきます。土木的スケールのものから路地空間まで、また、風景の形成とともに消滅や再生といった側面まで、これまで取り上げられることの少なかった事象に着目します。講義に引き続いて行われる巡見により、風景の中に身を置きながら、都市とそれを見つめる人々の意識、そしてその両者を大きく規定する時代背景について理解し、過去から現在・将来に亘る江戸東京の風景を考えていく手がかりにします。今年度は構成を変え、まず本講座では主な対象として、水辺に関連する領域を扱います。
【講師】 千葉一輝:ものつくり大学講師・元早稲田大学講師
松本泰生:尚美学園大学講師・元早稲田大学客員講師
赤坂 信:千葉大学名誉教授
第1回
04/10
原風景と眼差しの変容
千葉一輝
江戸という都市の風景を、そこに暮らした人々はどのように眺め、理解していたのでしょうか。明治となって以降、震災、戦災からの復興、高層化の進行など、風景が急激に変化し続ける中で、現代人はどのような状況に置かれているのでしょうか。江戸期に存在した都市空間の全体像が、崩れて断片化してゆく過程を把握し、東京に暮らす人々の眼差しの変容を理解します。
第2回
04/17
東京の地形と水辺
松本泰生
東京都心部は武蔵野台地の東端に位置し、山の手の台地には主に武家地が、そして下町の低地には主に町人地が形成されました。現在も、住宅地の多い山の手と商業地中心の下町という都市構造としてこれは継承されています。都心部の地形の概要を知り、今回は主に川や水路、埋立によって造られた水辺の地形と風景を見ていきます。
第3回
04/24

まちなか巡見
水道橋、御茶ノ水界隈を歩く
松本泰生
第2回の講義を踏まえて、台地と低地の境界部を中心に川沿いの風景を見るべく、神田川下流の水道橋、御茶ノ水界隈を歩きます。江戸の都市整備に伴って造られ、現在では東京の著名な都市風景の一つになっている神田川の切通しと聖橋、高台と低地からなる都心の街並み風景、近年の水辺の様子を見て行きます。
第4回
05/08
江戸東京の道
千葉一輝
道は通常いったん出来上がると、基本的にその当初の道筋が保たれたまま存続し続けようとします。江戸から東京にかけての主要な道や、山の手・下町の道路を、骨格やパターンとして構造的に把握し、街道や坂道や路地など、変わったもの変わらないものについて明らかにしていきます。
第5回
05/15

近世の遺構とその意義
赤坂 信
江戸の名所は、多くは高台にある寺社境内や川や池の畔という見晴らしのいいところにあり、江戸土産として多くの名所絵が生まれました。明治以降、名所は失われ、とくに近年では都市地域で高層化が進み、昔の面影はもはやないといわれています。しかし、果たして東京から江戸の姿(風景)が消えたのでしょうか。現代の東京に残る近世の遺構の存在理由について解説します。
第6回
05/22
まちなか巡見
外濠を歩く
赤坂 信
第5回の講義を踏まえて、東京に残る江戸の遺構(外濠ほか)を訪ね、その保存の意義を解説します。今の東京に歴史なんかないと感じている方も多いかと思いますが、その思いを一新する巡見を予定しています。
第7回
05/29
江戸四宿と川
松本泰生
江戸の市域に隣接し、遊興地として栄えた江戸四宿(品川、千住、板橋、内藤新宿)の中で、今回は品川宿と千住宿を中心として、川や水辺と宿場との関連を見て行きます。また、四宿の江戸における位置づけ、その街並み風景の特色について概観し、それらの近代以降の変容と現状についてもお話しします。
第8回
06/05
東京の川(荒川)
千葉一輝
明治以降、首都としての東京の繁栄を下支えしたのは、荒川(放水路)です。堤防の完成によって、下町一帯は洪水の危険から免れ、殖産興業の発展の礎となりました。近代土木史上、不滅の業績となった放水路の工事についてその経過を辿るとともに、荒川が与えた影響について、北千住を中心に見てゆきます。
第9回
06/12
江戸の川(隅田川)
千葉一輝
江戸の繁栄を支えたのは隅田川(大川)です。大川抜きに江戸の経済、文化を語ることはできません。しかし舟運から陸運への転換、そして戦後の経済成長期において水質が悪化するなど、隅田川は人々に背を向けられる時期が続きました。今世紀を迎える頃から急速に環境改善が進み、ようやく川沿いに人の流れがまた戻ってきています。スカイツリーの建設は江戸期の堀割にも目を向けさせる結果となりました。こうした隅田川の近年の状況を中心に解説します。
第10回
06/19
まちなか巡見
両国界隈を歩く
千葉一輝
第9回の講義を踏まえて両国界隈を歩きます。両国は江戸東京を考える際に抑えておくべき拠点の一つです。コースの詳細は講義の際に説明します。

・上記は予定です。都合により日程や講義内容を変更する場合があります。
・まちなか巡見は現地集合・現地解散で、4km程度歩きます。集合場所等は事前の授業でお知らせします。 八丁堀校との間の移動には時間が掛かりますので、登録の際は、前後に時間の余裕をおとり下さい。


【講師プロフィール】

千葉一輝:
1950年東京生まれ。慶應義塾大学法学部卒。早稲田大学大学院理工学研究科修了。工学博士(早稲田大学)。専攻は都市景観。台東区・新宿区や調布市等の景観アドバイザー。論文に「近代以降における東京の寺院集積地区に関する研究」「江戸・東京における眺望の変容に関する研究」などがある。富士見坂眺望研究会代表。
千葉一輝氏のWebsite「富士見坂眺望研究会

松本泰生:
1966年静岡県生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。博士(工学・早稲田大学)。都市景観・都市形成史研究を行う傍ら、90年代からの東京の階段を訪ね歩く。著書として『東京の階段』(日本文芸社)、『凹凸を楽しむ 東京坂道図鑑』(洋泉社)、『新宿学』(紀伊國屋書店・共著)がある。

赤坂 信:
千葉大学大学院を経て西ドイツ(当時)政府給費留学生としてハノーバー大学に留学。1981年より千葉大学助手として園芸学部に勤務し、2016年教授として退職。現在、千葉大学名誉教授。専門は造園学、風景計画論、都市緑地史。『ドイツ国土美化の研究』で京都大学から農学博士の学位を受ける。世界遺産委員会の諮問委員会イコモス(ICOMOS)国際会議で眺望の再生と復活をめざすVista Heritage(眺望遺産)の提言。日本イコモス会員(監事)。


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